LOGIN振り向くと、なにやら物々しい光景が目に入った。
ガラの悪そうなチンピラ連中が、歳のほど十二、三歳か? の少年を取り囲み、抜剣している。
「ガキぃ! この、バッド・バット様の財布をスるたぁ、いい度胸だなァ!」
なるほど。こそ泥が、相手を間違えたってか。だが。
「おらぁ!」
背後から、一人投げ飛ばす! 下は石畳。キョーレツに効いたはずだ! 実際、絶賛悶絶中だな!
「何だぁ、テメェ!!」
「通りすがりの、おせっかい焼きだ」
輪に入り込み、少年と背中合わせになる。
「オレ、助けてくれなんて言ってねーぞ」
「言っただろ、通りすがりのおせっかい焼きだって。とりあえず、盗んだものは返しておけ。それと、その、腰のダガーは抜くな。衛視が来たら、不利になるからな。相手を混乱させるように動け。俺が仕留めてやる」
「なんだよ……!」
「ほら、来るぞ!」
少年が、すばしっこく動き回ってチンピラを翻弄し、そこをすかさず、俺が投げ飛ばす。即席にしては、いいコンビネーションだ! 格闘技は専門じゃないが、伊達に『兄貴』と修行してきてないぜ!
連中、威勢の割には、素人に毛が生えた動き。瞬く間に、残り一人にしてしまう。
「ちくしょお、なんなんだよ、お前ぇ……!」
「だから、通りすがりのおせっかい焼きだって。ほら、返してやれ」
「……ほらよ」
少年が小袋を投げて渡すと、チンピラたちは、「覚えてろよー!」と、月並みな捨てゼリフを吐いて、ほうほうの体で逃げていった。
「あーあ、今日の稼ぎがパァじゃんか」
腹を擦る少年。
「飯ぐらい奢ってやるよ、こってり絞られた後に」
今更駆けつけた衛視に、事情を説明。少々面倒な思いをしたが、相手が札付きで、金も返したということで、お説教だけで済んだ。
◆ ◆ ◆ 「親父、串焼き二本」屋台で、でかい串焼きを注文すると、それを少年と分け合う。
うむ。食欲をそそる、スパイスの香ばしい匂い。噛むとアツアツな肉汁が溢れ出てきて、これが実に美味い。間に挟まった野菜がまた、肉のしつこさを中和する役目を果たしていて、文字通り良い味を出している。
肉! 玉ねぎ! 肉! ピーマン! 肉! 交互に叩き込まれる、味覚へのファイブヒット・コンボだ! 少年は、それはもう勢いよくがつがつと頬張っている。元気でよろしい!
「いつまでも、互いの名前がわからんのも話しにくいな。俺はロイ・ホーネット。お前は?」
「オレは、サン」
「名字は?」
「そんなもん、ねえよ」
ふうむ、名字がないと来たか。まあいい。
「なあ、ロイの兄貴。その出で立ち、冒険者だろ?」
「まあ、そうなるつもりだが」
「じゃあさ、オレを仲間にしてくれよ! 絶対役に立つぜ!」
「お前を? うーん……」
身なりや、スリを働いたところを見るに、
「よし、OKだ。今この時より俺たちは兄弟だ! お前もホーネットの姓を名乗るといい!」
「兄貴、かっけえ!」
はっはっはっ。腹がいっぱいになったら、現金なやつだな。おだてても何も出ないぞ。兄貴というのも悪くない立場だな。
さて、最初の仲間も加わったところで、根城とすべき宿を決めるとしよう。
しばらく物色していると、三日月の看板を下げた宿屋兼酒場から、シチューのいい匂いが漂ってくる。屋号は『青い三日月亭』か。こうした店の客寄せ手段の一つが、食事の匂いだ。よし、ここにするか。
「いらっしゃいませー」
店に入ると、カウンターに座っていたピンクの長髪の、二十代と思しき女性が笑顔で応対してくれる。この世界の女性は全体的に胸が小さいのだが、彼女もその例に漏れず慎ましやかだ。いやいかん、硬派の感想ではないな。うむ。
「宿を二人ぶん。あとシチューとパンを」
「相部屋しか空いてないですが、構いませんか?」
「構わんよな?」
サンもこくこくと頷くので、相部屋を取ってテーブルに通される。
何ぶん、シチューをよそってパンを切り分けるだけなので、料理はすぐに出てきた。
まずシチュー。コクが深く、牛のスネ肉から実に良い出汁が出ている。この奥深い旨味は、骨髄も出汁取りに使っているかも知れない。具の根菜も、ほろりとくずれてほのかな甘味を醸し出している。パンもふっくらとしていて、それでいてもちもちとした食感。うむ、この店は
今日は、サンとの出会いで一休みの成り行きになってしまったが、明日は中央の告知所に行こう。そこで、依頼も仲間もゲットできるはずだ。
◆ ◆ ◆ 食後、やることも特にないので、荷物を降ろしてベッドに腰掛ける。流石に「このベッドふかふか~」というほどではないが、宿代の割には、良いベッドなのではないだろうか。「湯浴みをどうぞ」
あの若い女将さんが、二つのたらいに湯を入れて持ってきてくれた。う~ん、サービスもいい。
「オレ、湯浴みとかすげー久々っす!」
ぽいぽいと、衣服を脱ぎ散らかすサン。で、パンツ一丁まで脱いだわけだが……え?
サ ン に は ア レ が つ い て ま せ ん で し た。
「お前、女だったのかよォォッ!?」
慌てて後ろを向き、思わず突っ込む。
「あれ? 言ってなかったっけ。兄貴、オレは気にしないから、こっち向いていいっスよ」
「いや、ダメだろダメだろダメだろ! お前が気にしなくても、俺が気にするわ!」
気を紛らわすために、壁を見ながら濡れタオルで体をこする。
なんてこった。俺の漢パーティーは、早くも頓挫しかけてしまった。次の仲間こそは、渋い男にしようと心に誓うのであった。
その夜、俺はパンツが脳裏に焼き付いてしまい、悶々としてろくに眠れませんでしたとさ。とほほ。
視点は、ロイからサンへ移る。 陰気なスラムを、用心深く歩く。 死体の髪の毛を抜いてカツラにしようとしてる痩せこけたババアなど視界に映り、気が滅入る。兄貴に出会わなかったら、オレもずっとこの世界の住人だったものな。 目当ての建物に着くと、階段を降りる。いかにも、盗賊たちの住処という感じだ。 こんこん、ここここんと、独特のリズムでノック。「何の用だ」 男の声が返ってくる。「最近景気悪くてよ。景気いい話はないかい?」「よそをあたりな」「じゃあ、三日後にまた来る」 そう合言葉を言うと、ドアが静かに開いた。「なんだ、ちっこいの」「ちょいと仕事したいんで、お見知りおきをってね」 番人に、そう返す。「金は?」 奥まった座にかけている人相の悪い男が言う。「これでいいすか?」 小袋を取り出すと、じゃらりと音がなる。「数えろ」「へい。ひい、ふう、みい……きっちり、金貨十枚」「まァまァだな。よし、こっちに来い」 まずは、第一関門クリア。ここから、ヤクの売人に、ありつけるかどうか……。 ◆ ◆ ◆ まず、スリの下っ端として活動することになった。 アテが外れたが、ここからだ。 裕福そうな奴がいたら、ちょいと頂戴する。兄貴と出会うまで、毎日やってたこと。 心が痛むかっていったら、今じゃ痛むけど、ギルドの信頼を得ないといけない。 今は、耐え忍ぶとき……。 ◆ ◆ ◆ ある日、吉報が舞い込んだ。ヤクの売人が大量検挙されたらしい。 しかし、ギルドとしてもヤクはデカいシノギ。はいそうですか、とやめるわけがない。 ギルドにとっては幸運、官憲にとっては不運なことに、幹部までは捜査の手が及ばなかったので、ヤクの売買は継続。穴埋め人員に、ギルドにとってはどうなってもいい、オレら下っ端が配属された。「クスリを……クスリをくれ! 銀貨十……いや、十二枚出す! 駄目なら十三枚だ!」 暗がりに立っていると、男がヨロヨロ近づいてきた。これは……! 内通者と取り決めていた符丁。十、十二、十三。「オレが売人に見えるのか? 男娼のほうが、まだ見えるだろ?」 こちらも符丁で返す。「あんた、クスリの匂いがするんだなあ……。なあ、頼むよ」 これも符丁。官憲の旦那、あんたいい役者になれるぜ。「……金貨で一枚だ」「金貨一枚! 無理だ!」「じゃあ
重い沈黙が続いている。 例の依頼票を手に、官憲の窓口にやってきたわけだが、「では、どうすればいいか」で止まってしまった。「我々は、潜入捜査のプロではありません。手法を共有していただかないと」「それは……」 無茶な要求だというのはわかる。官憲のノウハウをばらせと言っているのに等しい。 困ったな。せっかく高まった士気が、萎えてしまうではないか。「兄貴。平行線っす。オレがやってみるっすよ」「サン! 駄目だ、お前だけ危ない目に合わせるわけには」「蛇の道は蛇っていうっすよね。オレが適任だし、言っちゃなんだけど、頭数が多くても邪魔っす」 サン……。「昨日はああ言ったけど、兄貴の気持ちわかるっす。放置してていいもんじゃないっす」「……危ないと思ったら、すぐに逃げろよ」 強い意志を秘めた瞳に、そう告げるしかなかった。もともとは、俺が言い出したことなのに。「官憲の旦那。この国で、おとり捜査はアリっすか?」「あ、ああ」「なら、やりよーはあるっすね……」 考え込む義妹。 やっぱりやめよう。そう言いたいのを、ぐっと飲み込む。言い出しっぺの俺がそんなフラフラした態度じゃ、かえってサンの決意に失礼だ。「旦那。オレを盗賊ギルドに入ってるやつと同じ房にブチ込んでくれっす。そこから、ツテを作るっす」「なっ……!」 一同絶句。「あと、内部に潜入者がいるはずっすね? その人のことを……」 ポンポン段取りを決めていく。それに対し、唇を強く噛むしかできることがなかった。 昨日のヤク中女の顔が脳裏に蘇る。麻薬の蔓延を放っておいていいものではない。しかし、だからといって、サンだけを危険な目に合わせていいのか? 確かに、盗賊のイロハを知るのはサンだけだ。俺らがいても邪魔なだけというのもわかる。だが……。「わかった。来てくれ」 懊悩している間に、サンと官憲の間で話がついてしまった。「サン!」 官憲とともに立ち去る義妹に、思わず声をかける。「あの、その……。気をつけろよ!」「もちろんっす!」 にかっと微笑んでサムズアップする彼女。嗚呼……。 二人が見えなくなると、すっかりぬるくなった紅茶を、震える手で口に運ぶ。 せめて、いや、絶対に無事戻ってきてくれ! ◆ ◆ ◆ 視点はロイからサンに移る。
早朝、依頼票を見に行く。ベル嬢の依頼があるが、ついでにこなせるものがあるなら、こなしておきたい。 ……? 麻薬密売組織の壊滅? 穏やかじゃないな。依頼人は官憲。おいおい、冒険者に頼るとか大丈夫か?「うっへ」 変な声を出すサン。「盗賊ギルドのシノギっすよ、これ。ルンドンベアにも多少出回ってるらしいっすけどね」「この依頼、受けたいのか?」「むしろ、関わり合いになりたくないっすね。命がいくらあっても足りないっす」 何かと前向きなサンが、この様子とは。かなり、アンタッチャブルな案件のようだな。 とりあえず、これは置いといて……。むむ? 巨大鹿狩りとな?「これ、どうだろう?」 農作物に、かなり被害が出ているらしい。「いいのではないでしょうか」 フランがまず快諾。アンデッド退治が混入してなくてよかった。 ほかの皆も、異存なさそうだ。 ◆ ◆ ◆ 依頼人から正式に依頼を受け、森の中を、慎重に風下になるように進む。枯れ枝なども、踏まないように注意。皆には、飛び道具を配ってある。 聞くところによると、身の丈四メートルとか。厄介だなあ。 先行していたサンが、静止の合図を出す。……いた! たしかにでけえ! さらに慎重にスニーキングして、射程距離まで近づく。 一斉射! 命中! 的、でかいもんな! 雄叫びを上げる鹿。逃げ出すので、強重結縛糸をお見舞いする。自重で、動けなくなるはずだ!「いくぞ!」 クコから超力賦活草をもらい、接近戦に突入! 鹿も、角や蹄で応戦してくる!「包囲するぞ!」 五方向から取り囲む! ちなみに賦術火炎刃を使わないのは、肉が売れるのでは? と思ったからだ。依頼人いわく、いい果物をたらふく食ってるらしいしな! ナンシアの拳! サンのダガー! パティのショートソード! フランのモーニングスター! そして、俺の魔剣が五方向から襲いかかる!「角と後ろ足に気をつけろよ!」 これだけのデカブツの攻撃、食らったらえらいことだ!「盾を! ボクが囮になります!」「信じるぞ!」 ベルトポーチから盾を渡すと、鹿の攻撃をガッツリ受け止める。さすが、ハムロータ兄貴のチョップを受け止めただけはあるな! くそ! 脚の腱を切りたいが、めちゃくちゃに暴れ
新たな得意先となった、セイブル商会。 我々の助けもあって経営を立て直しつつあり、今日は茶に招かれている。 のだが。「犬を飼われたのですか?」 デカくて黒い犬が、舌を出しながら近づいてきた。 ら、腰をカクカクと振ってくるではないか!「おい、やめてくれ! その、人馴れしてますね」「ええ。『雌犬』なのに、こうして殿方に腰を振ってしまうのです」 なんか今、「ビッチ」のところ強調しなかった!?「これ、マルコ。おすわり」 主人の命令には忠実なようで、すとんと座す。「お茶が入りました」 着席すると、幼さの残るメイドが、茶を配膳してくれる。 口に含むと、芳醇な香りが鼻腔を満たす。この間より良い茶葉のようだ。経営立て直しは伊達じゃないということか。「そういえば、彼女はなんというお名前で?」 メイドが立ち去ったので、なんとなしに尋ねてみた。「彼女ではありませんわ、彼はユコといいます」「はい? 彼?」 思わず、間の抜けた返しをしてしまう。「はい。女装させてますの」 ぽかーん。「ええと、本人の意志で?」「私との合意の上でですわ」 なんというか……。ベルさん、性癖が歪んでらっしゃらない? 彼女、もとい彼がかいがいしく働いているところを見るが、少女にしか見えんなあ。「ところで、今日皆様をお茶に誘ったのは、商談も込みでですの」「と、申しますと」「西方のタリア国で、珍しい魔物が現れるという噂を耳にしました。その素材を融通していただければと」 タリア。アハ=イシュケよりさらに西だなあ。「構いませんが、結構な長旅になります。お時間と、その、路銀を融通していただけますと」「アハ=イシュケまではテレポーターを使って構いません。そこから先の馬車代もお出ししますわ」 そりゃ、ありがたい。「珍しい魔物とのことですが、特徴はございますか?」「こちらに、ざっと」 メモを渡してくるので、拝見。……ラドニー並みに、もやっとした情報だなあ。「この情報では、確約はできかねますが」「その際は、なにか適当な魔物の素材をお願いします。西方産というだけで、それなりに価値がありますので」 ふむ。「わかりました、ではこの条件で」 握手を交わす。西方かあ、見聞を広めるチャンスだな! ◆ ◆ ◆ そして、つつがなく到着したタリア。ここでも、
「キマイラは炎を吐く! 気をつけろよ! 雷王……」「待ってください!」 先制攻撃をしようとした刹那、背後から声がかかる。位置的に、魔獣使いの女性だろう。「チャッピーはいうことを聞く子なんです! 殺さないでください!」 チャッピーってキマイラのことか。無駄に可愛い名前だな。いや、そんなことより。「無茶言わんでください! あなた、襲われたばかりでしょう!」「でも!」 困ったな。キマイラの生け捕りなんてできるのか?「確約はできませんよ!」 やるだけやってみようの世界だな。「強重結縛糸!」 まずは、飛行能力と機動力を封じさせてもらう!「ナンシア! 挟み撃ちにするぞ!」「了解!」 とはいっても、キマイラの頭は三つある。挟み撃ちが有効なのか不明だが。 まずは一番たちが悪い、竜の頭から攻略だ!「ボクも加わります!」 パティの声とともに、がしゃんと鎧の音が鳴り響く。「武器は!?」「ポールを手に入れました! 槍代わりにします!」「助かる!」 これで三対一。いや、頭数なら三対三か。「龍の頭は、パティに任せた! いくぞ!」 挨拶代わりに、炎のブレスがきた! これは、パティのポールで挑発し、意識をそちらに向けてもらう。ナンシアが、上手いことヤギの頭をホールドした! ライオン頭が、咆哮を上げる! ん? なんか今、違和感が……?「クコ! キマイラに命活癒術草だ!」「はい?」 突飛な指示に、変な声を出す彼女。「キマイラに命活癒術草だ! いいからやってくれ!」「ええ……? よくわからないですけど! 命活癒術草!」 キマイラの体を、淡い光が包む。……と、キマイラが大人しくなった。「なんですと!? どういうことですか!」 驚くクコ。「あいつな、虫歯だったんだ。ちらっと見えた」 呆然とする一同。「あとは、私が」 魔獣使いの女性が、キマイラを檻に誘導する。 やれやれだな。 ◆ ◆ ◆ 「いやあ、実にお見事! これはこれで、彼氏の格好の良いところが見れた、充実したデエトだな!」 クッコロさんが、拍手で迎えてくれる。「いえ、それほどのことは」「前も言ったが、デエトなのにその口調はないだろう」「あ、あ
「やあ! おはよう、ロイくん!」 朝、青い三日月亭の食堂に降りていくと、めかしこんだクッコロさんがしゅびっと挙手してきた。「おはようございます、クッコロさん。朝食は……食べてますね」 彼女は俺たちより一足先にサンドイッチを食んでいたようだ。「相席してくれたまえよ。話がしたい」「はあ」 我ながら気のない返事で着席すると、バーシにそれぞれ朝食を注文する。「なにかご用でしょうか」「うむ! ドラゴン退治がしたい! ついてきてくれ!」 今なにか飲んでたら、絶対むせてた。「無茶です!」「私は、騎士物語の主人公のようになりたいのだ。だめか?」「諦めてください。無理です!」 「そこをなんとか!」と、「無理なものは無理です!」の応酬をすることしばし。朝食が運ばれてきたので、一旦休戦。「ロイくんは頭が固いなあ」 その言葉、そのままお返ししてもよろしいでしょうか。「そもそも、なんだってそんな急に」「それはだね! 昨日、竜退治の騎士物語を読んだからだよ!」 瞳を輝かせる彼女。ハイプライド卿。彼女から騎士物語を取り上げたほうがいいです。「今まで、幾人もの熟練冒険者が返り討ちにあっています。お父上を悲しませる気ですか」 あのドラゴン退治の依頼票、今もずーっと残っている。 もちろん、挑んだ者もいたが、結果は今述べたとおりだ。「むう。それを言われると弱いな……。では、代わりにデエトしよう!」 コーヒーを盛大にむせる。「失礼しました」 どうしてこう、意味不明な経路で極端から極端にいくんだ。「だめか?」「だめということはないですが」 と返すと、サン、ナンシア、あと一人の謎の視線が突き刺さる。なんでー!?「では大決定だな! 昼前にまた来るよ!」 一足先に食事を済ませていた彼女は、勘定を済ませると、うきうきと退店した。 ああ、断れなくなってしまった。「兄貴は、きっぱり断るという態度を持つべきっす!」「お姉ちゃんも同感」 とほほ。返す言葉がない。 ◆ ◆ ◆ きざすぎない程度にしゃんとした身なりをすると、コーヒーを飲みながら彼女を待つ。「やあやあ! 待たせたね!」 朝以上にめかしこんだクッコロさんがさっそうと現れる。「いえ、それほどのことは」「では、さっそくサーカスを見に行こう!」 サーカスとな?「サーカスがきているので